大人の音読~絵本専門士が厳選!声に出して味わう絵本~

脳を活性化すると評判の「音読」。小学生の宿題というイメージが強いですが、ストレス解消や顔回りの筋肉を鍛えるなど、大人にも効果的なんです。

特に絵本は★読み時間がちょうど良い★ハッピーなお話が多い★絵をガイドに読み方を工夫できる、、など、音読初心者さんにおすすめ。 読み聞かせボランティア歴16年、絵本専門士ふじむらゆきこが4月から全12回で音読を楽しめる絵本をご紹介します。


今月の1冊~

読み時間5分をきりたい!

思わず一息で読みたくなる挑戦的な絵本

「これは のみの ぴこ」

あっという間に季節は初夏へ。私たちのやる気もどんどんアップ!となればいいのですが、大型連休の後は五月病対策が必要な時期でもありますね。そこで、今月は脳に刺激を与えてやる気アップにつながりそうな言葉遊びの絵本をご紹介します!

「つみあげ歌」ってご存知でしょうか。最初の文章につながるように一文、一行、1フレーズといった単位で少しずつ言葉が増えていく遊び歌の一種です。そういえば子供の頃、こんな風に住所を少しずつ長く言って遊びませんでしたか?

〇〇市×丁目→△△県〇〇市×丁目→日本国△△県〇〇市×丁目→地球の日本国△△県〇〇市×丁目→太陽系の地球の・・・これも「つみあげ歌」のようなものですね。

詩人の谷川俊太郎さんは、この言葉遊びが好きなのか、これまでに数冊のつみあげうた絵本を出版しています。中でも音読難易度が高いのがこの一冊。タイトルと同じ「これはのみのぴこ」から始まる短い一文にフレーズが少しずつ積み上がり、そんなところに飛ぶか?という展開を見せながら最終的には15行にわたる長~い一文になります。

これが、難易度の高い理由。人って、一つの文章は一息で読みたくなるようで、知らず知らず早口になったり息が切れるまで読み続けたりするんですね。そんな読み手の必死さをなだめるような和田誠さんの絵を見るとふっと力が抜けて、和田さんに見透かされてるなあと感じます。

目標タイムを決めてうんと早口で読むもよし、滑舌練習をかねて大きな声で口を開けて読むもよし、気づけば達成感も得られて気持ちがすっきり。こんな絵本の使い方もありかな、と思います!

『これは のみの ぴこ』

 谷川 俊太郎 作 

 和田 誠 絵  

1979年 / サンリード


今月の1冊~

読み時間7分30秒

新しい季節を開く色彩豊かな絵と友情の絵本

「ねことことり」

暖冬暖冬といわれながら急に冷え込んだりして、花の季節が待たれる岩手の4月。

春をちょっと先取りする花々と猫の瞳が印象的な表紙にひかれて選んだ絵本は、「日本絵本賞」や「親子で読んでほしい絵本大賞」にも選ばれた評価の高い1冊です。

主人公は赤い屋根の家で一人暮らす猫。こぶしの木の枝を束ねる仕事に明け暮れている猫のもとに、青い小鳥がやってきてある「お願い」をするとことから物語が動き出します。

毛並みや葉脈など細かな部分まで丁寧に描かれた美しい絵と、猫と小鳥がお互いの相手を思う気持ちに心がふわっと軽くなる絵本は、優しい声で読みたいですね。ポイントは「笑顔」で読むこと。

笑顔で、と言われると口角をあげることに必死になる方がいますが、唇よりも頬に意識を向けて。口角からこめかみにつながる大頬骨筋(だいきょうこつきん)を動かすようにほっぺたを持ち上げると明るく優しい声が出ますのでお試しください。

<音読のあとは>

もう一度絵をじっくり眺めて世界を広げられるのもこの絵本の魅力。

室内の様子から猫の性格や日常の暮らしぶりを想像したり、鳥の名前や庭に咲き乱れる草花の種類は何か調べたり。カギとなる「こぶし」も調べてみると異名や香りなどがわかり、興味深いですよ!

『ねことことり』

 たてのひろし 作 

なかの真美 絵  

2022年 / 世界文化社

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