新型コロナウィルスがなんとなく収まっている11月前半。 これまでに経験したことのない世界的パンデミックで、私たちは不安に陥り、経済的にも精神的にもかなりの試練を与えられる状況となりました。
これを書いている筆者、伊藤は50代。 戦争もオイルショックも経験していない、これまで平穏無事に過ごしてきただけに、今回の出来事には相当うろたえました。 同じように感じた方も多いかもしれません。
両親や祖父母とも会う機会が減ってしまった時代に、このコロナウィルスの影響で更に会話も減ってしまった・・・。 私たちの指針となる言葉を聞く機会が減ってしまっています。 私たちは長い人生を歩んできた先輩の声を聞く必要がある・・・これからお伝えする人生の先輩の言葉は、いつか人生で悩んだり迷ったりした時、思い出して頂きたいと考えています。
今回ご紹介する女性は、幼少期に戦争を経験し、その後ご自身の病気といった困難を乗り越え、現在は何事にも前向きにハツラツと人生を楽しんでいる 小野寺澄子さん(82)です。
澄子さんは、私が主宰する朗読教室の受講生のお一人で、もう4年くらい教室に通って下さっている方。 いつも前向きで挑戦する気持ちを忘れない、朗らかで他人に優しく、背筋もピンとして本を朗読する・・・。 私はその姿をいつも拝見して、そうしてそのいつでも前向きな精神を、いつか多くの女性に知ってほしいと考えていました。
【高校教師時代に取り組んだ伝統舞踊】
岩手県立高等学校の体育教師としておよそ20数年勤めた澄子さん。 ライフワークとして日本の伝統舞踊を舞踊教育の中で教えていました。 転勤の度に地元の方から各地の郷土芸能を学び、授業や行事に取り入れ伝承に力を注ぎました。 水沢農業高校勤務時代には、その活動が花開き、「民族舞踊同好会」というクラブ活動が作られます。 その時の生徒たちと共に、後に水沢民族舞踊サークル「たけのこ」を設立し、現在も後継者により後輩の指導や地域の行事等で活躍し継承されています。
「教師を退職する時、水沢農業高校での民族舞踊教育の実践書【民舞の子】を出版しました。教え子たちが出版を祝う会を開いてくれて、その場で部活動で習った太鼓や踊りを披露してくれました。 これをきっかけに、「たけのこ」を立ち上げたんです。 これまでで一番嬉しかった出来事のひとつです。」
30年以上も続くこのサークルはコロナウィルスの影響でイベントの開催は残念ながら自粛されていますが、活動の再開が楽しみです!
【人生の転機を迎えるきっかけ】
生徒たちと心通わせ毎日を過ごしていたある日の体育の授業中、生徒とぶつかり左股関節が外れるというケガをしてしまいました。
病院での診断後、そのケガの原因はその時の事故によるものでははなく、先天的に外れやすい構造をした変形性股関節症だったことが判明しました。
当時まだ33歳という年齢から、澄子さんは手術を選ばずに東洋医学を用いて治療をすることに。 その時に出逢った先生に操体法を教わり、以後10年の教師生活を続けることができたそう。 その事が後の澄子さんの人生を大きく変えるきっかけになります。
【第2の人生のスタート】
ご自身のケガの経験から東洋医学への関心が高まっていた澄子さん。 40代半ばで教員を退職する事を決意し、整体の資格を取るための準備に入りました。
健康瘦身サロンの養成講座を受講し自宅2階で開業、整体の資格を取るまでの間、食生活改善の指導などにあたりました。
サロン開業の中、澄子さんは東京の専門学校に通信教育で入学し、各月5日間のスクーリングを経て、2年で体の歪みや症状を手技療法で治す姿勢保険均整士(ボディデザイナー)の資格を取得。 その後も勉強を重ねながら、多くの方々の不調の原因を取り除いてきました。
その時代は女性の自立が叫ばれ始めた頃だったそう。 起業女子のパイオニア!? ですね!!
現在は息子さんご夫婦が跡を継ぎ、多くの方々に健康の大切さを伝えています。
【大変だったこと・・・】
「股関節のケガにより大変な時を過ごしましたが、教師を退職したことも、第2の人生を歩む事になったのも先天性の股関節の病気によるものでした。幸いにも70歳直前まで働くことができ、仕事から解放され、信頼できる医師にも会えたことから手術を決意しました。 人工股関節置換術の手術を受けて12年。 何とか無事に過ごしています」
【今楽しんでいる事】
澄子さんは、前述したようにわたくし伊藤が主宰の朗読教室に通て下さっていて、毎回その朗読に感動させて頂いております。 滑舌トレーニングの教材でもある「外郎売」を、コロナ自粛中で外出が出来ないからと毎日お風呂でトレーニングし全文暗記したほどの努力家でもあります。 近くの小学校や中学校で朗読ボランティアをして、朗読のスキルをいかしているそう。
「滑舌トレーニングや発声の練習、朗読の技術や表現の仕方を学んで、ようやく自分の殻を破って表現できるようになり、朗読を楽しんでいます。そのスキルを生かした朗読ボランティアで、子供たちのキラキラ輝く瞳に接することができて、生きがいになっています!」
読書や朗読の素晴らしさと、本からたくさんの事が学べるという事を沢山の子供たちにも知ってほしいですね!
【生き方に悩んでいる女性にメッセージを】
「私の場合は、左股関節のケガという思いがけない人生の壁にぶつかりました。そこで諦めず何とか打開策を求めて努力をしてきました。 【求めよ、さらば与えられん】という言葉がありますが、求め続けたら人との出会いがあったり、場が与えられたりと道が開けてきます。 壁は神から与えられた試練と受け入れましょう」
苦しい時を乗り越えてきた方の言葉は、胸に刺さります。
【頑張る女性の皆さんにメッセージを】
「仕事も趣味も、納得するまでやり続ける!【継続は力なり】という言葉がありますが、やり続ける事で力がつくということはこれまでの体験の中で分かった事です。 起業するとなると家族の協力も必要になりますから、せっかく始めるなら家族の理解をしっかり得て頑張ってください!」
※小野寺澄子さんはこれまでの人生の記録として「今を切に生きる」という冊子を作成しています。